転生したら周りがスライムだった件 Season1 最終話「転生したら周りがスライムだった件」
???「自分達は授業を真面目に聞いていただって?オレをあんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな。」
???「な、なんやと!?」
???「このFラン大学に入学した3000人の殆どが、WW1とWW2の違いも分からない奴らだった。でもオレはあんな奴らとは違う。シラバスを読んだだけで単位が来るのは、ずっと昔に散々山川の一問一答と戦っていたからだ。他にも色々知ってるぜ。」
???「な、なんやそれ……そんなんFラン生どころやないやんか!もうチートや、チーターやろそんなん!」 *1
大学1年編最終話!!
1.永劫回帰のパンドラ*2
弊塾では、我々バイトに保護者対応(面談等)を担当させるという、面倒な事この上ない悪しき風習が存在する。今では慣れたものだが、最初の頃は段取りや打ち合わせの相応の時間を費やしたものだ。
―思い返すと、この経験は目上の人とビジネスライクに話すという点で、就活時に役に立ったと感じる。それはさておき、書くこともないので生徒の保護者の対応にあたる中で感じた事を、字数稼ぎのために何点か書いておきたい。
①中間層の再生産
読んで下さっている方にとって「さんまの東大方程式」という番組はお馴染みだろう。天下の東大生を珍獣か何かのように扱うという、民法の下品さを象徴したり、出演者の誰かが自民党議員の愛人となりパパ活系YouTuberとしてデビューしたりと、話題に事欠かないアレである。
数年前、この番組のとある回で、
「東大にまで行った人は、中学・高校の教師にはならない。だから中間層の人が、中間層の人を再生産している」
という発言が物議を醸した。日本の教育事情の一面を捉えているように思う発言だが、「中間層が中間層を再生産」という部分に関しては、
"教師"→"生徒"
に限らず
"親"→"子供"
に於いても同様であると、バイトを通じて実感することになった。当たり前のことなんだけどね。
弊塾では夏冬の講習期間では、高校&大学受験生に対して、総額10〜20万円前後の授業提案を行う。我々塾業界の言う事をそのまま飲み込む保護者の手元には、金額が多い場合だと、年間を通じて100万円近くの請求書が郵送される事になる。
我々は、保護者の足元を見て強気に攻める事が義務付けられているので、鵜呑みにしない方が良い。いや、必要だと思ってるのも事実なんだけど、自力で勉強できる子とかは本当講習取らなくていいよ。あと勉強する気皆無の子に何十万円かけてもガチで無駄だよ。
今では法外な額だと感じるのだが、大昔に通っていたSAPIXでは年間150万円かかった事だし、大変傲慢だが当初は「まぁこんなもんだろ」という認識でいた。
だが、冷静になって考えてみると、世帯平均年収550万円の時代に、塾に対して年間100万円支払うのは到底無理な話だ。
親ガチャで
・首都圏住み
・平均年収上位
・教育意識が高い
の3条件を揃えたスカディ級のSSRを引き当てなければ、教育費のみで年間100万円、累計で1000万円以上*3を課金されて、育てて貰うことは出来ないだろう。まあその結果、僕はNカードとして育っているのだから、両親には申し訳なさで頭が上がらない。
そんな親ガチャでSSRを引き当てている僕にとって、子どもの人生の一大イベントである受験学年に、全く財布の紐を緩めない保護者が相当存在するのはかなり意外だった。(加えてそのような家庭に限って何故か志望校が高いのが毎年の悩みのタネである)
生徒に全く学習意欲が無い場合は微塵も思わないが、一定の学力や意欲もあるのに、補正予算を絶対に組んでくれない保護者に対しては、その家庭にどのような事情があるにせよ、もどかしく思う。
学区内に都立上位校~最底辺校がバランスよく揃い、ほぼ100%の家庭が都立志望*4のこの地域では、受験する都立高校のランクとその試験結果で、その生徒が大学進学するか否かがほぼ見えてしまう。この実情は単純な合否以上に辛いものがある。
我が家のように鷹と思われた息子がトンビ以下だった例も、その逆も、世の中には多く存在する。結局子がどう育つかは個々の事例に拠るのだろう。
が、中間層が中間層を再生産する構図は確かに存在するし、その大部分に金銭的事情が絡んでくるように見える。願わくば、将来何かの間違いで子供が持つ事になったら、教育に対して不自由なくお金と時間を費やせるような親になりたいと思う。
②教育の地域格差
さて、前項では教育への投資意識が低い現在の勤務先の話をしたが、その真逆の地域も存在する。
生徒直々の指名を受け、半年間、他教室に勤務した時の事だ。驚いたことに、その教室に来校する保護者の多くは、蛇口を捻るかの如く塾へお金を払う。
20万円の請求書が「あーなるほど~こんな感じなんですね」と、すぐに判を押されて返ってくる光景を何度も目撃した。
生徒が申込書を提出するそのたびに
ぼく「えっ、これ(金額的に)本当にいいの??」
生徒「なにが??」
ぼく「いや……」
という会話をする事になった。
この地域には、有名私立大学のキャンパスが2つあることで、駅前に集合塾・個別塾が乱立し、競合状態となっている事が要因なのか、世帯年収が高い≒教育への投資意識が高い家庭が揃う。
この結果、同じような公立中であっても、進学実績が他地域と比べ、数ランク上の結果が出る現象も起きている。
勤務した2つの教室は駅3つ分しか離れていない。ド田舎なので地価も大して変わらないが、子供の教育を考えると、周りの教育意識が高い地域を居住地に選ぶべきなのだろうと感じた。
以下は有名な記事だと思うが、以前読んだ後も、強く印象に残っていたので紹介しておきたい。
③Catch my dream*5
つい先日、アイドルマスターミリオンライブシアターデイズにてメインコミュ第67話「夢の黎明」が公開され、最上静香のソロ2曲目「Catch my dream」がプレイできるようになった。
このコミュが非常に泣けるわけである。横浜線に揺られ、マスクを鼻水で濡らしながら譜面を叩いたのも記憶に新しい。
最上静香は父親からアイドル活動をする事を反対され「中学生の間まで」という期限付きで認められている*6。「私には時間がないんです」という静香の言葉は、その事情を映し出しているわけだが、今回のコミュでは静香の父親を説得するプロデューサーの姿も描かれている。
静香Pにとっては、(恐らく1年後の世界ではより強固に)静香パパがプロデュースの壁として立ちはだかるのであろう。しかし、実際の所、娘が水商売の世界に飛び込むとなった場合、それを許す親の方が珍しいのではないだろうか。
「お前、娘の前に結婚相手どころか彼女すら居ないだろ」
「普段からリア充は死刑と呟いているのはどの垢だ」
「童貞は黙れ」
などの的確なツッコミは一度脇に置いてほしいのだが、仮に僕に娘がいたとしても、アイドル業には猛反対するに違いない。
幸か不幸か、僕はペーパーテストの結果と偏差値が重視される世界で長い間生きてきたし、それ以外で物事を判断する価値基準を未だに大して持ち合わせていない。
娘が居たら、全力で桜蔭入学にベットすると思う。まあ出産ガチャで当たりを引けたらの話だが。多分、同じことを考える同期や先輩は一定数いらっしゃるだろう。少なくとも息子なら開成に入れたいと思う人は多いのではないか。
そういえば5月頃だったか、Zoom飲み会にて部活の同期に「未だに偏差値の世界で戦っているのは同期400人いてお前だけだ」と非常に鋭い一言を頂いた。
確かに、就活で高偏差値低能軍団を相手に闘志を燃やし、その様子を思い返しては逐一Twitterに投稿する滑稽な事を続け、おまけにブログまで開設しているのは、僕くらいだろう。
――閑話休題。
そんな僕にとって、とある家庭との面談は忘れ得ぬ経験となった。
担当してから1年ほど経つ中学生の女の子の生徒だった。
「私、将来声優になりたいんです。」
と面談の席で告げられたのである。どう反応すればいいか分からなかったので、取り敢えず保護者の方に話を振った。すると、
「娘の夢は応援するのが私達のやるべき事だと思っているし、本人とも十分話し合ってその方向で進路を考えています」
という内容の返事が返ってきた。昨今の声優業界が供給過多(仕事の需要も多いが、声優志望者の絶対数も多すぎる)である点、何故か最近の声優は歌も楽器もダンスも出来る必要がある点*7を伝えたら、覚悟はしている、とキッパリ言われたのも驚きだった。
その子は賢い生徒だった為、中堅の都立高(大学進学率8割前後)に進学できる地頭や学力もあったと記憶している。そんな子を遥かに厳しく先の見通しが立たない世界へと送る決断は、僕には出来ない。
そもそも選択肢として持つ事すらないと感じた。間違った夢と断じて、"普通の"進路へ引き戻すのが努めとさえ思ってしまう。
この出来事から2年半経ったが、僕はいまだに最上静香父の価値観から脱却出来ずにいる。
――結局塾へのお願いは、せめて義務教育範囲は平均的に出来るように指導して欲しい、という事だった。
せめて高卒資格は取った方が良い、と伝えた結果、その後、高卒認定が貰える専門学校のような所へ通うという結論に至った気がする。
保護者の方も、僕がアニ豚兼声豚という事はご存じだった為、その後の話は弾んだ。締めの話題はこれだった。
保護者「好きな声優誰なんです?」
ぼく「男なら細谷佳正さん、女性なら早見沙織と種田梨沙さんです!!」
保護者「どんな声の人が声優向いてるとかって思ったりとかします?」
ぼく「特徴があるか、張りがあって通る声かなーと。なので向いてると思いますよ(ニッコリ」
2.世間知らず、頂点に立つ*8
さて、冬の寒さも和らぎ、三寒四温の言葉が相応しい気候となった3月のある日。僕は2度目の成績発表の瞬間を待ちわびていた。
試験勉強をサボりにサボっていたとはいえ、そこはFランクオリティー、余裕で単位は取れそうだし、ほとんどの科目はS評価だろうと踏んでいた。
が、前期同様のGPA4.0は早々に諦めていた。というのも、諸事情により1科目が追試験受験となっていたのである。裏垢の同期から、「追試験は満点でも75点が上限になるよ*9」という情報を貰っていたので、諦めるのは早かった。
バイト終わりの午後6時。緊張の面持ちでサイトにログインした。半年前とは違い、慣れた手つきで成績欄を開く。真っ先に下のGPA欄を確認する。
「4.0」
ぼく(……は??)
何度見ても「4.0」だった。
ついでに各教科のスコアを確認したら全部Sだった。要するに、1年次の首席が確定してしまった。
・追試験受けても「S」
・1回も授業に出席せずとも「S」
・板書1つも無くても「S」
・シラバスだけ見ても「S」
これがFランの現実だ。信じて頂けないだろうが、世の多くの大学で実施されているのは、この程度の教育なのである。
コロナの影響で、大学の授業がほぼオンラインになり、まともな教育が受けられないと嘆くツイートが散見される。が、どうせ対面授業でも定期試験はこのレベルなのである。その上、理解度は授業に殆ど出席していない僕が一番なのだ。対面でもオンラインでも大差ないのではないか。経済学部の人は日経電子版さえ読んでればいいと思う。
どうせ彼等の多くは、対面授業が再開されると、サークル活動と称した飲み会に明け暮れて、授業には出てこないか、後ろで寝ているだけだ。Fランに住む陽キャとはそういう生き物なのだ。
(まぁ図書館に入れないのはマジでクソなんですが……。ホント卒論どうしよ……。施設利用料とか返せよ。)
――超進学校の底辺は、Fランの頂点に立った
かつて、僕はスライムだった
だが、僕はゴブリン程度には強かった
転生したら僕の周りはスライムで溢れていた
「転生したら周りがスライムだった件」
Season1 完
ステータス
名前:ADM内野手
種族:オタク
称号:陰キャ・ぼっち・童貞
バイト戦士
Fラン大学の優等生
評点2.3・GPA4.0
代講者
ありふれた大学で学内最強←NEW!!
開成の底辺・Fランの頂点←NEW!!
魔法:『出エジプト』
『シラバス勉強法』
技能:ユニークスキル『塾講師』
ユニークスキル『社畜』
耐性:ぼっち耐性ex
Season2 もお楽しみに!!!*10