転生したら周りがスライムだった件 Season1 7話『シラバス勉強法』
??「ノー勉のまま試験を迎えて落単しても誰も文句言わないのに、『なろう主人公になる』という使命を誠実に果たしたんだよ。つまらない使命でも手を抜かず当たり前のようにやり遂げるなんてなかなかできないよ。」(cv.巽悠衣子)
??「シラバス勉強法という新しい魔法まで生み出してしまうなんて……さすがはお兄様です!」(cv.早見沙織)
大学1年編⑦
1.おやおや、ここは目次のようですねぇ
12月に差し掛かり吹き付ける風も冷たさを増し、キャンパスを歩く陽キャもすっかり冬服を纏い始める。
この頃になると、☆必殺魔法☆モーセの『出エジプト』も使いこなせるようになり、友達が1人も居ない癖に、キャンパスを我が物顔で闊歩するようになった。
しかし、流石に上着がないと厳しく、スーツに合う服を調達する必要性に苛まれていた。が、服を買う金も時間も気も持ち合わせていなかった。家には高校時代に使ってたベンチコートしかない。なので、取り敢えず父親のクローゼットに入っているコートを借りパクする事にした。こうすればタダである。
鏡を見た。当然変わり映えしないチー牛の顔が映っているわけだが、完全にこうなっていた。
???「(私を侮辱するのは)やめなさぁぁぁぁぁぁい!!!(プルプル 」
水曜21時の番組で目にするあの人みたいな格好になってしまった。
確かにどう見ても学生の姿ではない。バイト先では同期に醸し出すオーラが40代のおっさんと言われた。
大学の授業では、ある教員がプリントを出席カードを配って回る際、職員か何かと勘違いしたのか、遂に僕をスルーするようになってしまった。
学内Wi-Fiに接続する為に、学生部に寄ったら
「職員用の窓口はあちらになります」
と回れ右を促された。中々に不便である。
ちなみに、丈も長く暖かそうなので、毎日のように使っていたら
パッパ「そのコート20万するからな」
と言われた。翌日から着ないようにした。
2.性の6時間
――冬休み。それは休む事が許されない休みを意味する。
再び、バイト先から人が半分消えた。恒例の試験休み期間の到来である。それに対し休む事が許されないのがFラン私文であり、その数少ない該当者の僕は、元々担当生徒数を増やしていた分に加えて、主要な代講引受先となった。
その結果、1月の収入は20万円近くまで跳ね上がった。全部ソシャゲとコミケに消えた。
★称号★『代講者』 獲得
さて、話は変わり、バイト先の研修の候補日一覧に「12/24(日)」の項目が存在した。日曜日に予定があるはずもなく、出席可(〇)のボタンを押したところ、思わぬハラスメントを受けることになった。
大学生のクリスマスイブは、皆何かしらの予定があるらしい。恐らく「性の6時間」という奴を過ごしているのだろう。陰キャ・ぼっち・童貞には想像もつかない世界である。
結局研修は別日となったが、余りにも授業コマ数が多かった僕は、独りで教室を開けて授業をする事になった。
受験生にもクリスマスイブなんてものは存在しないのである。ざまぁみやがれ
3.シラバス勉強法
年を越して2018年となり、大学の授業も最終週を目前に迫っていた。簡単に言うと、勉強を殆どしていなかった。
バイトも相変わらずフルシフト。丁度クリスマスの頃から、午前中は8時から教室を開けて、昼頃に大学に向かい出席カードを提出して、すぐさまバイト先に戻る一日を過ごした。
その為、帰宅する頃にはアニメを見る体力すら残らず、勉強できる筈もなかった。
トータルの出席率は7〜8割程度で、授業もある程度聞いていた為、多くの科目において、入念なテスト対策の必要も無かったのは幸いした。お得意の徹夜詰め込みでこなせる量とレベルの問題しか出ないのがFラン大学である。
しかし、中には1回も出席していない授業が存在した。(6話参照)
板書もプリントも無い上に、同期のLINEアカウントは1つも持っていないので、情報を手に入れる手段が存在しない。完全に詰みである。
普通ならこの時点で落単を覚悟し、他の科目の勉強に充てるだろうが、なろう主人公はこんな些細な事で諦めたりはしない。
何故なら、なろうライフとは主人公に都合の良いように世界が調整してくれているからである。
冗談はさておき、授業も試験の情報も無く困っていたのは確かなので、シラバスを見る事にした。ある程度の授業概要が掴めるはずである。中身をチェックすると近現代の政治経済史に関する授業が行われていたらしい。
首席なので、前期試験では当然Sを修めた。首席なので。その為、難易度や問題の傾向は把握出来ている。正直高校の政治経済と内容もレベルも変わらない。
ぼく(ひょっとして、高校の教科書見れば単位貰えるのでは……?)
思い立ったが吉日。試験半日前の真夜中だったが。
しかし、受験勉強等に使ったテキストは殆ど処分していた事に気づいた為、横で二次試験の勉強をしていた弟の机から世界史&政経の教科書を強奪して、勉強を始めた。
世界史は真面目に勉強した覚えがなかったが(センター6割強)近代の強かった点が幸いした。大まかな流れだけ再確認して、試験本番を迎えた。
4.本番
――いざ2度目の定期試験。そこそこの緊張に包まれて臨んだが、殆どの科目で問題用紙を開いた瞬間に単位を確信できた。分からない問題が殆ど無いから当然である。
高校時代によくいた「やべ〜ノー勉だわ〜」と言いつつ、蓋を開けたら評点9点台を取る誰かさん(不特定多数)と全く同じ状況だった。
……が、出席していない範囲の部分や記述問題だと正解の確信は持てない。
流石に全教科Sは無理と悟りつつ、最大の壁になりそうな出席0の科目の試験を迎えた。
問題を見て愕然とした。簡単どころの話では無かった。何なら小6の時でSAPIXで解いたレベルの問題が多数混じっている。"円高"やら"G7"やら、そのレベルの単語を答えさせる問題のオンパレード。
徹夜しても赤点だった高校時代。その数年後、徹夜しなくても満点を取れる世界へ転生していた。
最も酷かったのは
・以下の語群に含まれる語句について、経済的に説明しなさい
[不平等条約・プラザ合意・南北戦争・アジア通貨危機・etc.]
という問題。
解答欄を見ると、10行程の記入欄が用意されていた。この情報だけで何を書けというのか……逆に悩ましい。というか"経済的に"とは何なのか。
取り敢えず知ってる事を全部書いたら、回答用紙の裏面も埋め尽くす事になった。
結局のところ、Fラン大学とは、授業に出席せずともシラバスを読むだけで単位が取れてしまうのだ。
★魔法★『シラバス勉強法』獲得
効果:授業に1回も出席していない際、シラバスだけを見て授業内容を把握し、該当範囲を勉強する事。非常に効率的に単位が取得できる。
5.冬の日、心の所在*1
前期の成績を鑑みて、多少手を抜いても学業(単位取得)に支障が無いことが分かり、次の興味は卒業後の就職に移っていた。
同期のイチモツ君によると、我等が組主任の1人は卒業文集に
医者、官僚、弁護士に学者、うちの生徒はこのくらいしか職業をしらないんじゃないか。
平成27年度卒業文集『里程』p752 より一部引用
と寄稿したらしい。実際現時点で知りうる、同期や先輩方の進学先や就職先を聞いても、その通りだと痛感されられる。
自分ももうワンランク大学に進学していたら、地方公務員も選択肢に加えていたかもしれない。しかし、地方上級試験の勉強をする気も起きず、公務員給与の削減のニュースを耳にしたりと、ロクでもない理由で民間就職の道を選択する事にした。
――学生手帳を見たら、就職に悩んでる学生は"キャリアセンター"に行くように、と書かれていたので、授業の合間に向かう事にした。
僕の相手をして下さったのはS氏だった。
ぼく「就職活動ってどう進めるものなんですか?」
Sさん「君今3年生だよね。今どういう状況なの?」
ぼく「あ、1年です。この格好はバイトがあっt……」
Sさん「なんで1年生でここに来てるの?」
またも変な奴扱いされた。数年勤務する中で、1年でキャリアセンターに来る奴を見た事がないらしい。
ぼく「いや、この大学って……偏差値アレじゃないですか」
Sさん(無言)
ぼく「就職活動早めに動き出さないといけないのかなぁ、って思ってですね」
今思うと中々失礼な事を言う奴である。話の流れで、OBの就職先一覧を見せて貰った。確かに見た事ある企業も相当数ある。
ぼく「でもこのJ○東日本とか、大○証券とかって、殆ど体育会系のコネですよね」
Sさん「いや……えっと……」
ぼく「僕部活やサークル入ってないので、そういうコネ的なの省いてどういう就職先があるのか知りたいんですよね」
ぼく「例えば、この人とかが学生時代どんな事していたかー、なんて資料ないんですか?」
Sさん(無言)
クソ失礼な奴である。実際体育会の部活枠なんだろうけど。
その後も"Fラン生に就職口はあるのか"や"インターンとか言う奴はどう申し込むのか"などをグダグダ相談し愚痴り、"時事問題に詳しくなりましょう""TOEIC勉強しましょう"という当たり障りのないアドバイスを頂いた。
――結局、その後も定期的にキャリアセンターに足を運んだ結果、SさんはADM担当職員になったらしく、数年に渡り僕の愚痴聞きをする事になってしまった。*2
ちゃんと就職先決まりました。感謝です。
6.どんなトモダチできるかな*3
弊学では希望者のみ2年生からゼミに所属する事ができる。Google先生に聞いたら「ゼミに入らないと就活でヤバイ」と教えてくれたので、何処かしらに所属する事にした。受けていた授業の中で、興味の持てそうな分野の先生の所に希望用紙を提出した所
「希望者多数につき面接を実施します」
との張り紙が出されていた。
面接当日。いつも通り杉下右京のコスプレスーツ姿で教室に入ると
教授「……えっと……、ここは私の部屋でして……。もうすぐ学生と会うので、少し待って貰っても宜しいで……」
ぼく「あ、多分その学生が僕です」
やはり学生扱いされなかった。もう慣れた。
面白味のない面接は普通に喋り、普通に通った。
最初に「学生生活どうですか?」と聞かれた時は困ったが、やりたい学問が出来て充実感があるとか、適当に話した記憶がある。
――これが来年度から味わう事になる、更なる地獄の幕開けだった。
7.次回予告
無事に定期試験を終え、長い春休みを謳歌するADM内野手。運命の成績発表の時が近づく。それはサボりにサボったツケを清算する刻が間近に迫っていることを意味する。
果たしてFラン転生なろう主人公の座をキープできるのか?
――次回、Season1最終回
ステータス
名前:ADM内野手
種族:オタク
称号:陰キャ・ぼっち・童貞
バイト戦士
Fラン大学の優等生
評点2.3・GPA4.0
代講者←NEW!!
魔法:『出エジプト』
『シラバス勉強法』←NEW!!
技能:ユニークスキル『塾講師』
ユニークスキル『社畜』
耐性:ぼっち耐性ex
*1:Fate/stay night[Unlimited Blade Works] 8話サブタイトルより引用
*2:通常は手の空いている職員がその時毎に学生の相手をするが、僕は足繫く通った結果、全部Sさんが相手をする事になった。