転生したら周りがスライムだった件 Season2 1話「二項定理」
※筑波大学で活躍している高校同期君(@OsoneHiroyuki)の作成のBunCho(@Bun_Cho_)とコラボ(勝手に使って)して、あらすじを生成してみました。ネタ不足の時に活用していきます。
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1.森羅万象担当大臣就任
つい先日、都知事選が行われ、"女帝"小池百合子氏が再選を果たした。投票率は55%とコロナ禍の中では下げ止まった数値に落ち着いた。
独立国家コドモスタン共和国在住のADM内野手に都知事選の選挙権は無いのだが、仮に貰えたとしてもわざわざ投票所に足を運びはしないだろう。単純に外に出るのは面倒だし、僕もしょうもない日本の政治*1に興味関心を抱かないイマドキの若者の一味だ。
さて、日本の政治がしょうもない理由の1つとして、安倍総理の愚にもつかない発言を、しょうもない野党議員が取り上げ、しょうもないメディアが騒いで、しょうもない愚民が反応する……。という近年のお決まりの流れが挙げられる。
そのうちの1つとして、昨年こんな話題があったのを覚えている方はいらっしゃるだろうか。
このニュースが報じられた時は、流石にドン引きした。役所の負担の大きさが最大の原因だったとされているが、丁度この頃、国の統計資料を基にレポートを作成していたので、書き直しとなる恐れがあり、非常に困った覚えがある。事の顛末を知らないので、官公庁勤めの人はコメント欄で教えてください。
この問題に付随する国会答弁の中で、本筋とは何ら関係ないのに、何故か盛り上がった事の1つが、安倍総理の「森羅万象」発言である。
足立氏が「テレビの前の方はガクッときたと思う。大事なことなのに残念」と返すと、首相は「総理なので森羅万象すべて担当している」と説明。「さまざまな報告書があり、すべて精読する時間はとてもない。世界中で起こっている(ことに関する)電報などもある」とし、自身の多忙ぶりに理解を求めた。これに対し、足立氏は「気持ちは忖度(そんたく)いたします」と皮肉った。
因みにこの後、国民民主党所属の源馬謙太郎議員から以下のような質問主意書が提出されている。
一生懸命勉強して国会議員になっただろうに、こんなアホみたいな質問主意書を提出して楽しいのだろうか。答弁書を作成する官僚の方は、何を思って業務にあたっているのだろうか。甚だ疑問である。
――閑話休題。
総理大臣が森羅万象すべてを把握するべきかか否かは、心底どうでもいい。では、バイト戦士がアルバイト業務のすべてを把握する必要はあるのだろうか?
2年目の転機
アルバイトも2年目に入り、相も変わらず忙しく働いていた。20数年間の人生で体得した習性が変わるはずもない
先輩講師の御守りの手から離れたこの頃、教室は大きな転換期を迎えた。とても業績好調とは思えないもののオーナーが業務拡大に踏み切り新教室を開校したことで、教室長が交代したのだ。今までのオーナーは新教室へと旅立った。
後任として赴任してきたのは、元オーナーの高校の同級生というだけの……要するに業務面に関しては只の素人だった。*2
この結果、バイト講師を束ね教室全体の責任を負うべき人が、その実はバイトより経験が無い……という状態が発生した。片道切符の出向で来たお飾り部長、なんて「半沢直樹」で見ることが出来そうな展開を間近で経験することになってしまったのだ。
当然業務にはかなりの影響が及んだ。僕の勤め先の教室は、広域指定暴力団T緑会の講師のように、時給10000円もくれないどころか、ほぼ最低賃金で我々を働かせる。そんな時給で働かされて、仕事への責任感なんて高尚なものが生まれる筈がない。
所詮、最低賃金のアルバイトには、最底辺の責任感と最底辺の仕事スキルしか生まれないのだが、顧客側(=生徒&保護者)にそんな事情は一切関係が無い。
そのバイトが起こした不始末などを一手に片付ける立場の人が素人なのだから、運営がどうなるかはお察しである。
――その後の展開は、中高時代の焼き直しだ。自分の周囲で不都合が起こるのを嫌い、勝手に首を突っ込んでは仕切り屋を始める、悪癖が顔を見せる。
が、そうやって軋轢を引き起こす原因となりながら、優秀な周りに支えれられて過ごした6年間は、全くの無駄ではなかったらしい。
何か疑問に感じたら直ぐに報告と指示。加えて社員より先回りしてミスの素を潰す作業を徹底した。それを繰り返すうちにいつしか、バイトを頂点としたヒエラルキーが形成された。
こうなると話は早い。僕が抜ければ業務が破綻する状況を作ってしまえば、無理も我儘も飲み込ませることができる。
こうして、アルバイトの分際でありながら、教室の全権を堂々と掌握することに成功した。僕は森羅万象大臣として、新たな☨ドミニオン☨を築いたのであった。
2.皆さんご一緒に
大学の方はというと、無事2年生に進級した。相変わらず友達も知り合いも出来ていない。
1年次のGPA4.0は当然トップだった事もあり、学内奨学金を〇〇万円貰うことができた。振り込まれた当日に窓口で全部新札で引き出した後に父親に渡した。僕の取り分は1割だった(翌月のコミケですべて消えた)。
新年度の学業は真面目に取り組んでいたのかというと、全くそんな事は無かった。週2回ほど、1限に授業を入れていたが、GW頃から全く出席しなくなった。すっかり模範的私文Fラン生の姿になっていた。
なぜ履修登録の時だけモチベーションが高かったのか今でも謎である。
そんな訳で、全体の出席率は半分強まで落ちていた。自主休講日も増え、キャンパス内からフェードアウトしていった為、必然的にFラン特有の面白エピソードも減るはず……なのだが、思い返すと記事を書くのに困らない程度には存在するのが恐ろしい。
本項では2年前期に受講した衝撃的だった講義の一幕について記述したいと思う。
その講義は名前こそ「〇〇経済学」とついているものの、中身は商学系か金融工学に近かった。15回の授業でずっと金利計算をしていた覚えがある。
①初回
禿げた爺さんが黒板に大きく「きまり事」と書き出した。
次の文字列を見て頭を抱えた。
お気づきだろうか。上の2つの式は何かがおかしい。普通の指数法則であれば左辺の「+」「-」の所は、「×」「÷」となるはずだ。いや、当たり前なんだけどね。
教室には100人以上の学生が居た。当然間違いに気づいた学生も居ただろう。が、誰も指摘しなかった。他授業の様子や小テストの平均点を考慮しても、指数法則を正しく知る学生は、約半数程度だと考える。彼らにとっては可哀そうな幕開けだっただろう。
僕は周りの点数が少しでも下がれば、相対的に自分の評価が上がるので指摘しなかった。
②2回目
今回も講義冒頭に「きまり事」と書き出した。
ぼく(……???)
2週連続で同じ板書ミスが発生した。流石に、自分の記憶違いを疑ったが、そんな事は無かった。その後の計算では、正しい公式を用いていたので、本当にただの書き間違いだったらしい。そして誰もミスを指摘しなかった。
という事で、この講義では半年間、誤った指数法則を「きまり事」として扱うことになった。
③開成と公立高校の違い
この爺さん教授は非常に雑談好きで、授業の3割を本筋とは全く関係ないトークが占める。授業料を返せと言いたくなるが、Fラン大学生は真面目に授業をされても真面目に聞かないので、この塩梅で丁度良いと言える。
―5月某日。彼は唐突な昔話を始めた。因みにこの日は開成の運動会当日だった。*3僕は泣く泣く午前中で観戦を切り上げ講義へと向かった。
後から知ることだが、この教授は以前、某名門私立大学で教鞭を執っていた経験もあるらしい。
「30年くらい前に、私がー、前の大学で教えてた頃なんですけどね。研究室に開成の生徒が2人いたんですよね」
「今となっちゃあー、信じられないんですけど、昔は都立高校の方が開成より上だったんだよなガハハ」
「都立高と開成の間とか、武蔵と開成の違いってのもあるんですよね、灘はそれよりちとばかし上に上がるんですけど」
「開成と都立高の違いってのはですね。19^2がスッと出るか出ないかなんですよ」
「開成の卒業生に19^2はいくつ?って聞いてみると、彼等はすぐ答えるんですよね。皆さんぱっと出てこないでしょう?」
「これをぱっと答える人は、数学をちゃんと勉強していて、東大に行くんです。」
ドヤ顔で独自理論を披露するこの教授の、数m前に立派な反例が座っているとは思いもしていなかっただろう。
皆さんは19^2の値をすぐ答えられるだろうか?
ちなみに僕は99^2までは即答できるのに、何故かFラン大学に進学して、こんな講義を受講していました。勉強は大事です。
④開成・灘、驚愕のカリキュラム
昔話は続く。
「開成や灘なんてのは中学3年間で高校範囲の数学全て終わらせるから3浪しても同じなんですよ。ガハハ」
ぼく(は???)
記憶が正しければ、僕の学年は正弦定理・余弦定理を触れた程度で高校に持ち上がった記憶がある。
果たしてどの世界線、どの時間軸の高校なのか不明だが、少なくともこの理論に従うと、僕はあと2浪してもセーフだったらしい。
⑤皆で暗唱、二項定理
さて、この授業のメインは関数電卓とのじゃれ合いだった。その中の単利・複利の計算の際には、二項定理を用いる事がある。*4
当然"二項定理とは何ぞや"と言った解説もあり、公式も板書してくれた。
ここまでは良かった。ここまでは。
次の瞬間、自分の耳を疑った。
「はい、じゃあこれ皆さんで言ってみましょう」
「僕の後に続いてください。えっくすプラスわいの、えぬ乗イコール!」
「はい、皆さんどうぞ」
呆気にとられていると、周りから「えっくすプラスわいの、えぬ乗イコール」と声が聞こえてきた。意外と皆授業を真面目に聞いていたようだ。
「えぬしーぜろ、えっくすのえぬ乗、わいのゼロ乗、足す、えぬしーいち、えっくすのえぬ引くいち乗、わいのいち乗、足す!」
その後も暗唱は続いた。なんと小学校2年生のかけ算九九以来、約15年振りに授業内で公式の暗唱を行った。
最後に「皆さんこれ覚えましょうね」と言われた記憶がある。
しかし、解の公式や展開公式などは暗記する場合は多いだろうが、二項定理とは口で唱えて暗記するものなのだろうか……?というかどう頑張っても覚えられない気がするのは僕だけだろうか。
この後も公式の暗唱は続き、対数の微分公式やらなんやらを、皆で仲良く暗唱する回など存在した。
「皆さんこれ覚えましょうね」
「でぃーろぐえっくす、でぃーえっくす、いこーる!」
生徒「でぃーろぐえっくす、でぃーえっくす……」
「えっくすぶんのいち(早口)。簡単だよね。分かり易いよね。今度は見ないで言ってみましょう。」
3.次回予告
8月。日も長くなり、ずいぶんと暑さが立ち込める中、機械音痴の僕は22:30になってもまだバイト先で課題をやっていた。
課題はパワーポイント。矢印の出し方だとか文字、図形の挿入などさっぱりわからない。
残っているのはもう僕一人だった。
ドアが開いた。〇〇部の顧問の仕事から、Y先生が帰ってきたのだ。*5
ステータス
名前:ADM内野手
種族:オタク
称号:陰キャ・ぼっち・童貞
バイト戦士
Fラン大学の優等生
評点2.3・GPA4.0
代講者
ありふれた大学で学内最強
開成の底辺・Fランの頂点
魔法:『出エジプト』
『シラバス勉強法』
技能:ユニークスキル『塾講師』
ユニークスキル『社畜』
耐性:ぼっち耐性ex